IRトップページの進歩―本当に伝えたい情報は何ですか?

2011年6月15日

3月期末の決算発表が終わり、株主総会の季節が幕を開ける。投資家にとって重要なイベントが目白押しの時期であり、IRサイトへのアクセスが増える時期でもある。最新かつ重要な情報が多いことから、流入からの的確かつ効率的な誘導がユーザーの大いなる助けとなるはずだ。

IRサイトトップページに求められている役割

従来からIRサイトトップページに求められている役割の中でとくに重要なものは、以下の2つだ。

(1)最新ニュースを伝える

(2)目的のコンテンツへの道筋を示す

1番目の「最新ニュースを伝える」とは、まさに文字どおり、IRサイトを訪れたユーザーに最新のニュースや適時開示情報、更新情報などをいの一番に伝えるということである。IRトップのニュースや新着情報欄がこの役割を担う。毎日、あるいは毎週、毎月ごとに訪れるリピートユーザーにとっては必須の情報だ。大多数のIRサイトではすでに実現できているのだが、未だにリリース(PDF)だけをダラダラ並べただけのIRトップを目にすることが多いのは、はなはだ残念ではある。

2番目の「目的のコンテンツへの道筋を示す」とは、こちらも文字どおり、ユーザーが求める情報へ適切に誘導するための仕掛けということである。例えば、主要なコンテンツへの動線、下位階層をポータルサイトのように一覧にする形態などだ。はじめて訪れるユーザーやあまりディスクロージャ情報に明るくないユーザーにとって有用であろう。個人投資家を主要ターゲットにすえる場合にも有効かもしれない。コンパクトなのに一覧性が高い振り分け領域を構築できている企業がある一方、リンクの配列がタテに長すぎて全体が間延びしてしまった顔の長いトップページもあり、様相はさまざまではある。

トレンドはより機能的で機動的なトップページへ向かう

ところで近年は、上述の考え方を一歩前に進め、より洗練されたIRトップページを見かけることが多くなってきた。以下のようなものが典型だ。

(3)次回のイベントスケジュールをIRトップに掲載する

(4)最新の決算説明会や株主総会などのイベントを強調する

(5)ディスクロージャ資料や特集コンテンツなどの見てほしい情報を強調する

(その他、あわせて自社株価を組み込むサイトも増えている)

(3)~(5)で共通しているのは「ファーストビュー」の使い方だ。単純かつ平坦に最新情報やコンテンツを並べるのではなく、IRサイトを訪れてまず目に入る領域に、投資家にとってとくに重要な最新の決算情報、あるいはぜひ投資家に見てほしい情報を目立つように掲載・配列する。バナーを活用することもある。

例えば、決算発表終了後は決算短信やプレゼンテーション情報の案内を、株主通信やアニュアルレポートを発行した場合はその案内を、そして、今の時期であれば株主総会の開催、および議決権行使の案内を、ということになる。そして、これらを時期に応じて機動的に入れ替えながら、各企業のIR戦略やIRサイトの主要ターゲットユーザー層とコンテンツ戦略に応じて、告知と誘導を適切に行ってゆくという塩梅だ。

これらにより、IRトップを訪れれば、直近に何が行われたのか(あるいは次に何が行われるのか)が即座にわかる。そして、ターゲット別に考えれば、個人投資家をはじめとしたはじめて訪れたユーザーや漠然としたニーズでフラッと訪れたユーザーには「気付き」を与えることができ、また、リピートユーザーにとってはそのまま当該ページへのスピーディな移動を助けるショートカットとしての役割も併せ持つことにもなる。

IRサイトトップページは機能性と機動性を兼ね備えた性格へと進歩している。

コンテンツを活かすための工夫が求められている

昨今は、株主総会における電磁的議決権投票、あるいは株主通信やアニュアルレポートなどのオンラインレポート化(HTML化)などにより、インターネットを中心とした機能・情報提供の場面が増えている。他方、せっかくの施策やコンテンツも、ユーザーに気づかれなければ意味がない。見られなければ役に立たない。手間暇かけた優れたコンテンツを無駄にしない、いや、より輝かせるためには、コンテンツそのものの改善のみならず、投資家にとって重要な最新情報、見てほしい情報などの適切な案内・告知、誘導というウェブサイトの本質的な部分を工夫し、改善することも必要不可欠である。