IRサイトランキング2011:総括

2011年4月27日

今回は2011年4月20日に発表した「Gomez IRサイトランキング2011」を総括する。

評価基準厳格化によりノミネート企業は182社減

2011年調査では、IRサイトに求められる情報ニーズ等の高まりを受け、ノミネート評価基準を大幅に引き上げた。これは主に、株主総会(招集・決議通知)情報、臨時報告書等による議決権行使結果の開示をはじめとしたIRサイトに対するさまざまな情報開示要請の増大、そしてそれに伴う情報構造のゆがみやユーザビリティ悪化を見込んでの処置である。

その結果、ランキングのスコアリング対象となった企業は606社となり、前回2010年調査の788社から182社の減少となった。

業種別の内訳は、以下のとおりである。

業種 2010年 2011年 (前期比)
水産・農林業 3 4 1
鉱業 3 4 1
建設業 31 19 12↓
食料品 33 25 8↓
繊維製品 10 5 5↓
パルプ・紙 4 3 1↓
化学 40 32 8↓
医薬品 20 17 3↓
石油・石炭製品 9 7 2↓
ゴム製品 5 5
ガラス・土石製品 6 3 3↓
鉄鋼 7 8 1↓
非鉄金属 14 10 4↓
金属製品 12 10 2↓
機械 37 31 6↓
電気機器 81 66 15↓
輸送用機器 16 16
精密機器 13 12 1↓
その他製品 22 17 5↓
電気・ガス業 15 13 2↓
陸運業 12 7 5↓
海運業 4 4
空運業 1 1
倉庫・運輸関連業 5 4 1↓
情報・通信業 118 76 42↓
卸売業 55 40 15↓
小売業 42 35 7↓
銀行業 28 23 5↓
証券・商品先物取引業 18 13 5↓
保険業 7 5 2↓
その他金融業 18 13 5↓
不動産業 24 22 2↓
サービス業 75 56 19↓
合計 788 606 182↓

残念ながら、IRサイトへの情報開示要請の高まりに対して、従来と変わらぬ対応しかしてこなかったサイトの大多数が振り落とされた結果となっている。

なお、上場市場別の内訳は、以下のとおりである(2010年ジャスダックの数値は、ヘラクレスとの合算値である)。

市場 2010年 2011年 (前期比)
東証1部(大証1部) 573 480 93↓
東証2部 34 18 16↓
ジャスダック 143 86 57↓
マザーズ 34 21 13↓
その他 4 1 3↓
合計 788 606 182↓

IRサイト優秀企業は微減にとどまる

291の評価項目から構成されるスコアカードについても、評価基準を引き上げた。スコアカードとは、ノミネート企業のスコアリングを行うための評価システムであり、ランキングの基盤となるものである。こちらも予選基準同様、株主総会情報、およびユーザビリティ関係の評価基準を中心に、全体的に評価基準を厳格にした。結果、総合得点6.00以上の「優秀企業」は前期比6社減の123社となった。新規選出企業は10社(ソネットエンタテインメント、キヤノン、東京急行電鉄、住友化学、大日本住友製薬、三菱重工業、グローリー、スクウェア・エニックス・ホールディングス、日本たばこ産業、川崎重工業)である。他方、除外は16社(合併による消失含む)である。

業種別、市場別の内訳は、以下のとおり。

業種 2010年 2011年 (前期比)
水産・農林業 1 1
鉱業 1 1
建設業 0 0
食料品 6 7 1↑
繊維製品 3 3
パルプ・紙 0 0
化学 7 8 1↑
医薬品 5 6 1↑
石油・石炭製品 4 3 1↓
ゴム製品 0 0
ガラス・土石製品 3 3
鉄鋼 0 0
非鉄金属 2 2
金属製品 0 0
機械 3 4 1↑
電気機器 21 19 2↓
輸送用機器 3 4 1↑
精密機器 3 2 1↓
その他製品 2 2
電気・ガス業 3 3
陸運業 1 2 1↑
海運業 2 2
空運業 0 0
倉庫・運輸関連業 0 0
情報・通信業 13 12 1↓
卸売業 9 7 2↓
小売業 5 4 1↓
銀行業 7 7
証券・商品先物取引業 4 4
保険業 5 5
その他金融業 2 2
不動産業 6 4 2↓
サービス業 8 6 2↓
合計 129 123 6↓

また、2011年3月調査より、総合得点6.00以上の「IRサイト優秀企業」を達成水準ごとに「金賞」「銀賞」「銅賞」の3つのランクに区分した。その内訳を見ると、評価基準を厳しくしたにもかかわらず、8.00以上の企業が増えていることがわかる。

優秀企業内訳 (2010年) 2011年 (前期比)
金賞(8.00以上) 6 8 2↑
銀賞(7.00以上) 39 33 6↓
銅賞(6.00以上) 84 82 2↓
合計 129 123 6↓

(※2010年は選定制度が異なるため、参考値として掲載)

株主総会関連の情報開示が進む

最後に、上位200社による詳細評価カテゴリごとの平均スコアの推移を見ることで、比較的優れたIRサイトはどの領域に改善の動きがあったのかを確認してみよう(「メディア・リレーションズ」「英語による情報開示」は今回からの新設により比較不能)。

赤線が2011年調査、青点線が2010年調査時のランキング上位200社の平均スコアを取ったものである。なお弊社ランキングでは、ウェブサイトや情報開示に関する最新動向に合わせて、毎年少しずつ(場合によっては大幅に)評価基準を引き上げている。そのため、何も動きがなければ自然にスコアに下押し圧力がかかるような調査設計になっている。

ここで上記グラフを眺めてみると、「株主総会」の部分で二本の線の乖離が大きくなっていることがわかる。つまり、IRサイトにおける招集通知や決議通知、議決権行使結果などの情報掲載が大幅に改善したことが伺える。今回は上位企業にあまり大きなスコア変化は見られなかったが、株主総会など時代の要請に応じた情報開示へのIRサイト上での対応は、的確に行われているようだ。