2012年衆議院選挙速報サイトレビュー~分かりやすさと操作性の観点から~

2012年12月17日

2012年の衆議院選挙では、乱立する政党と候補者のなかでその政策の把握に苦労した有権者も多かったと思う。
20時に投票が締め切られた後は、翌日未明の大勢判明に向けて、新聞社などのニュースサイトは選挙結果の特設サイトを用いて開票速報を伝えていた。ここでは、それらのサイトが閲覧ユーザーにとって分かりやすく使いやすいものであったか検証してみたい。

毎日新聞 2012衆院選

毎日jp

画面構成としては左側に660pxのメインコンテンツエリア、右側に300pxのサブコンテンツエリアとなっている。
最上部では各政党別の当選・当確者が赤く記載されており、その内訳を小選挙区・比例代表の2段で白く載せている。さらにその下に青色で公示前の議席数を記載しているが、この表組みの見方は直感的には分からない。
表組みのデザインや色使いが、表の論理構成を表していないのだ。

メインコンテンツエリアには、表の見方の注記が多かったり、広告記載が多かったり、わかりやすさを前面に考えていないように感じられる。

右側サブエリアには、当選・当確者数を「民主・国民」「自民・公明」「第三極・その他」に分けて大きく表示させているが、そのすぐ上に広告動画があるため、この大きな結果数字部分が目立っていない。
さらに下側に候補者一覧として全国の都道府県のリンクがあるが、例えば「東京」とクリックして東京の小選挙区の情報を見に行くと、そのページからは比例東京ブロックのページには遷移できず、一度トップページに戻ってくる必要がある。

このようにトップページのレイアウト構成だけでなく、サイト全体としての操作性にも工夫の余地があろう。

「毎日ボートマッチ えらぼーと」という、衆議院選挙の争点に関する質問に答えると、自分と政党や候補者との考えの近さを知ることができるコンテンツを用意していただけに、結果速報サイトのクオリティは残念だ。

産経新聞 衆院選2012特集

msn 産経ニュース

左側のメインコンテンツエリアは640px、右側のサブコンテンツエリアは300pxであり、一般的なニュースサイトの横幅を保っている。
メインコンテンツ上部では各政党の開票状況を、獲得議席数の数値だけでなく、棒グラフや半円グラフを用いて視覚的にわかりやすく表現している。

ただ、グラフには過半数241議席の印は示されているが、選挙結果がこのように自民党の圧勝となってきて、争点が衆議院の3分の2にあたる320議席が獲得できるかに変わってきている状況では、320議席のライン表示があってもよいのではないか。
刻々と変化する状況に応じて臨機応変にサイトも変化させる柔軟性が求められる。

NHK 2012衆院選

NHKオンライン

新聞各社の選挙特集サイトが、あくまで新聞サイトの中に位置づけられているのに対し、NHKの特集サイトは完全に別のサイトとして構築されている。
左側のメインコンテンツエリアは736px、右側サブメニューエリアは210pxとなっており、メインエリアを広くとった構成だ。
新聞社サイトと違い、NHKのサイトでは企業広告がないため、全体としてシンプルでわかりやすいサイトとなっている。

また、トップページを構成する各情報が、パーツごとに情報更新できるようになっていたり、自分のお気に入り情報を登録できるようになっていたり、かなり機能的なトップページとなっている。

ただ、過去のNHKの選挙特集サイトと比較すると、地図表示がわかりづらかったり、クリックして画面が大きくスクロールするだけの箇所が多かったり、使い勝手・分かりやすさの面で少し課題が多いように感じられた。

全体的な使い勝手の検証を行いつつ、次回の選挙特集サイトでは改善を望みたい。

朝日新聞×ANN 第46回総選挙

朝日新聞

左側のメインコンテンツエリアは645px、右側サブコンテンツエリアは300pxであり、新聞社のニュースサイトとしては標準的な構成となっている。

画面上部に企業広告が掲載されていない点は、他の新聞社サイトと比較してよい点だ。
しかし、各党の獲得議席の表では文字サイズが小さかったり薄かったりして視認性に欠ける点や、候補者を探すための全国地図では文字サイズが小さく非常にクリックしづらかった。

各候補者の個別ページにおいて、候補者自身に対して行った政策・政治スタンスの調査結果が載っているのはわかりやすい。 また、注目の速報動画として、ANNのニュース動画を多く掲載しているのは特徴的である。

読売新聞 衆院選2012

YOMIURI ONLINE

右側サブコンテンツエリアは300pxで固定されているが、左側のメインコンテンツエリアはいわゆるリキッドデザインとなっていて、今回の調査対象サイトのなかでは唯一ブラウザの横幅に応じて拡縮するようになっている。
それによってユーザーは画面いっぱいに情報を表示させることができ、見やすさに役立っている。

画面は上部で半円グラフと獲得議席がわかりやすく表示されており、小選挙区では日本地図に模した形で、小選挙区・比例代表それぞれの政党別の獲得状況をアイコンで表している。
NHKでも同様の表示は見られたが、読売新聞のサイトではアイコンに「自」「公」「民」などの文字が入っており、色だけに識別を頼ったNHKよりはわかりやすく掲載されていた。

また、テレビにおける選挙速報のように、当確情報が写真付きで流れており、躍動感のあるサイトになっている。

総評

選挙において開票が始まった後に知りたい情報は、自分や自分の関係する選挙区や政党の議席獲得状況である。
もちろんテレビにおいてもデータ連携でその速報をインタラクティブに知ることができる。ただ情報の多さ・深さや、レスポンスも含めた操作性の良さではパソコンやタブレット端末によるインターネットへのアクセスのほうがメリットがあるはずだ。
今回の調査対象の各サイトでは、それが活かしきれていたのだろうか。
とりあえず選挙結果とニュースを流しているだけ、というスタンスのサイトになっていなかっただろうか。
今後は、朝日新聞のような候補者の政策・政治姿勢の詳細情報や、NHKのようなカスタマイズ性のあるサイトの取り組みなど、利用者の環境の変化による情報機器の役割の変化をきちんととらえたサイト作りが必要とされている。
AJAXを利用したインタラクティブ性のある画面、タッチパネルを前提とした操作性のよいサイト、ソーシャルメディアとの連動など、まだまだできることはある。2013年7月の参議院選挙のときに期待したい。