IRサイトランキング2020上位サイトの解説

2020年12月23日

当社は国内の上場企業が提供するIRサイトの使いやすさや情報の充実度の評価を目的としてランキング調査を行っている。調査項目は「ウェブサイトの使いやすさ」「財務・決算情報の充実度」「企業・経営情報の充実度」「情報開示の積極性・先進性」の4つの切り口から、主要ユーザーである投資家の視点に基づいて設定している。今回は上位企業のIRサイトの特徴を解説してみたい。

2020年における上場企業サイトの動向

国内の上場企業は、株主・投資家の視点に立ったWebサイトの改善や財務情報の掲載のみならず、ESG投資の世界的な増加や企業のサステナビリティへの取り組みに対する強い社会的関心を背景に、企業ビジョンへの理解や共感につながる非財務情報の発信に積極的に取り組んでいる。また、2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大が企業活動に与える影響が甚大となり、例年通りの株主総会、決算説明会や株主向けイベント等の実施が困難となった。そのため、こうした従来の株主・投資家向け広報(以下、IR活動)を、動画掲載やオンライン説明会の開催といったWebサイトを活用した情報発信で代替・補足する傾向も強く見られた。

第1位 コニカミノルタ

ユーザーの視点でより使いやすいサイトになるべく細やかな改良を毎年重ねている同社だが、企業情報に関する新しいトピックや変更点が発生した場合、ニュースへの掲載だけでなく、迅速にWebサイト自体にもそれらの情報を反映しており、Webサイトが企業経営と一体化している。

世界的に関心が高まっているESG関連の項目については、マテリアリティと関連するSDGsを明確にし、一覧性が高く具体的で分かりやすい情報発信を達成していると言える。また、役員報酬や政策保有株式といったガバナンスにおいて近年特に関心の高い項目についても、数値・名称を明記し、図解しながら丁寧に説明している優れたサイトだ。

第2位 カプコン

企業情報・財務情報において豊富な情報量・機能を誇っている。財務数値に関するチャートジェネレーターの設置やダウンロード機能等が充実しているだけでなく、販売本数等についてもグラフやイラストを交えて紹介しているため、ユーザーは事業内容や業績に関する理解を深めることが可能だ。また、多言語での情報発信にも力を入れており、英語では日本語とほぼ同程度の情報提供してフェアディスクロージャーを実現している。英語での電話問い合わせも受け付けており、外国人株主・投資家も重視している同社の姿勢がうかがえる。

伊藤忠商事およびKDDI

伊藤忠商事のWebサイトは、特に個人投資家向けのページにおいて、グラフやイラストを効果的に配置し、コンパクトでありながらも充実した情報量と分かりやすさを両立させている。キャラクターとアニメーションを用いた親しみやすく分かりやすい特設ページも設けている。統合報告書やGRIガイドラインの対照表等のHTML掲載に取り組んでいる点も特筆すべきだ。役員報酬や個別の役員の選任理由等の注目度の高いガバナンス関連の項目についても具体的な記載が充実しており、Webサイトを通じて自社の考えやメッセージを明確に発信していると言えるだろう。

KDDIのWebサイトでは、株主還元の方針や実績について数値やグラフを交えながら具体的に記載している。IRトップページには、株主優待へのメニューやアクセスランキングに加え、投資計算機も掲載し、個人投資家へ配慮する姿勢も明らかだ。適時開示等をHTML掲載しており、ニュースリリースや検索ボックスの機能性や操作性もとても高いため、細部にわたってユーザー目線でのサイト作りが徹底されている。

国内の上場企業のIRサイトにおいて、こういったランキングの上位の企業は参考になるが、単純にこれらと同様の対応をすればよいという話ではない。自社の経営状況を取り巻く環境と、重視したいステークホルダーに合わせて、最適なボリュームでの情報開示とウェブサイトの使い勝手のよさを実現することが重要である。

(ゴメス・コンサルティング 森澤 正人)